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05 幸せに包まれるレザージャケット My Dear Tejas

05 幸せに包まれるレザージャケット My Dear Tejas

RHC Journal

Posted on Jul 25.2023

2022FWからRHC ロンハーマンでの取り扱いがはじまったMy Dear Tejas。信頼を置いているテキサスの職人たち、そしてデザイナーのスーザン・キム自らの手によって作られるアイテムは、愛に溢れているのです。




「“テハス”はネイティブ・アメリカンの言葉で友情や友達という意味があります。My Dear Tejasには『私の親愛なる友達へ』という意味を込めました。あたたかい名前だと思いませんか?」
デザイナーのスーザンはこう言います。サンフランシスコで30年間セレクトショップを営んできた彼女が2017年にスタートさせたMy Dear Tejasが展開するのは、アメリカ国内で廃棄されるはずだった皮をサステナブルに確保し、鞣された鹿革を使ったジャケット。そして、ジャケットの生産過程で出る残布を用いたバッグや小物類。プロダクトとしての美しさの中に、人の温もりとエネルギーを感じるような世界があります。
「私は北カリフォルニアで暮らしているのですが、カリフォルニアに暮らしていると街にいても美しい自然に触れることができます。そんなこともインスピレーションの源になっていますし、音楽からもインスピレーションを得ます。私のインスピレーションは、いつもの暮らしの中にあるのです。壮大なイメージになりますけど、人生そのものがインスピレーションだし、人との繋がりがインスピレーションなんです」

そんなスーザンが、今でも毎日インスピレーションを得ているのが、祖母の存在なのだと言います。
「私たち3姉妹は、7歳から12歳まではソウルで祖母に育てられました。彼女は皆に愛される女性で、とても愛情が深かった。そして、とても強い人だった。たとえ強くても、愛がなかったら通用しないと思うんです。彼女は毎日綺麗にしていて、毎日おしゃれをしていて、多くを分け与える人でした。彼女のように生きていきたいといつも思っています。子どもの頃の私はとてもシャイで人と話すことがなかったけれど、彼女はいつも『そのままでいいのよ』と言ってくれて、何も強制されたことはありません」

暮らし、人生そのものがインスピレーションだというスーザンにとって、創作の原点とも言えるし、スーザンという人間そのものを形成してくれた祖母の存在が、インスピレーションの核の部分を占めているというのもよくわかります。


左/スーザンの人生に大きな影響を与えたのは祖母の存在だった。右/「木や花の写真をよく撮ります。自然の中の色に惹かれるのです」とスーザン。


「人生におけるコレクションは人に会うこと。それが私を前に進めてくれます」というスーザンは、人との出会いをとても大切にしています。
RHC10周年イベントの際に来日した時には、RHC ロンハーマンみなとみらい店にてオーダー会を開催。スーザンは訪れたお客様とコミュニケーションを取り、そこにはたくさんの笑顔が溢れていました。

その時に展示してあった一際目を奪われたのは、鮮やかな刺繍が施されたデニムパンツ。聞くと、彼女が16年間手を加え続けているものだそうです。カラフルに植物や模様が描かれたパンツを見ていると、とても明るくポジティブな気持ちになってきます。

「私はセラピーパンツと呼んでいます。世界でどんなことが起こっていても、刺繍をすることで癒されますし、平和を願って刺繍をするのです。私の人生は色に彩られています。だから、自分の人生はとても面白くなっていると思っているんです」


左/16年間刺繍を加え続けているセラピーパンツ。中/レザーアイテムにも刺繍のオーダー会を開催した。右/スーザンの手による製作中の刺繍。


My Dear Tejasのプロダクトは、40年ほどの親交があるというテキサスの職人と共に作るアイテム以外は全てスーザンの手によって作られます。制作過程についても、できる限りシンプルにすることを心がけているのです。それは彼女の地球環境に対しての向き合い方にも表れています。

「洋服作りには無駄が多く出てきてしまいますよね。私はできるだけ環境に負荷をかけないようなやり方を考えたいのです。自分が使う素材も自分がコントロールできるようにしたいと持っています」
スーザンの作るアイテムには、ハートやピースマークのモチーフ、HOPEやDREAM といった言葉の刺繍が多く施されます。ハンドステッチによるそれらのマークには、ひと針ひと針、スーザンの想いや願いが込められているのがよく伝わってくるのです。
「初めて私のジャケットを着てくれたお客さんが『私、今ハグされているみたい』と言ってくれたんです。それを聞いた時に自分は正しいことをしたんだと思うことができました。私がジャケットを作ろうと思った時に意識したのは、まず着心地がいいこと、スタイリッシュでおしゃれであること、トレンディではなくて、シンプルで仕立てのいいものなんです。ジャケットを着てくれた人がハッピーになってくれたり、鏡を見て自分はなんでもできる! と自信を持ってくれたりしたら嬉しいですね。それは24歳でも81歳でも関係ないんです」

ハグされているような気持ちになるジャケットを着るって素敵な体験ですよね。
好きな服を纏うということには、ファッションを楽しむだけではない価値観があって、人を幸せに、ポジティブにしてくれるという素敵な行為だということを、スーザンがあらためて教えてくれました。


左/My Dear Tejasを象徴するフリンジ付きのレザージャケット。左/ジャケットのあまり素材を用いて作られるポーチ。廃棄ゼロのものづくりを目指している。





Profile
スーザン・キム
北カリフォルニア在住。サンフランシスコで30年間セレクトショップを営み、2017年にMy Dear Tejasをスタート。大学時代に好きだったフリンジ付きの鹿革(ディアスキン)のジャケットを再現することからブランドは始まった。長年培ったデザイン美学をもとに、長く付き合うことができるディアスキンジャケットのコレクションを提案している。
https://www.mydeartejas.com


text:Takuro Watanabe/photo:Rai Shizuno

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