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RHC Journal

Posted on Aug 27.2025

目にするだけで心が弾むポップな色遣い。刺激的でエッジがきいたデザイン。けれど手にすると、不思議とやわらかなぬくもりと確かな上質さを感じます。この秋冬に誕生する「y YO」(イーヨ)は、「モードなカシミヤブランド」というユニークなコンセプトを掲げ、RHC ロンハーマンにもお目見えします。生みの親であるスタイリストの高木千智さんとクリエイティブ・ディレクターでバイヤーの片山久美子さんに、お話をうかがいました。


スタイリストの高木千智さん(左)とクリエイティブ・ディレクターでバイヤーの片山久美子さん。二人とも長年の友人ながら、一緒に仕事をするのは「y YO」(イーヨ)の立ち上げが初めて

——RHC ロンハーマンでは、この秋冬にy YOをリリースいたしますが、とても魅力にあふれるブランドだと思います。カシミヤという伝統的でラグジュアリーな素材を「モード」という切り口で、刺激的かつ斬新にアイテムに落とし込んでいます。高木さんと片山さんが、ファッションの世界の一線で活躍してきたことが大きな要因だと思いますが、ブランド誕生のきっかけを教えていただけますか。

高木:私が元々、仕事をしていた会社がカシミヤのブランドを扱っていて、お話をしているうちに興味がわいてきて。「やりたい!」と手を挙げたんです。だけど、私はベーシックなものが好きで、遊び心がないし、どこにでもあるカシミヤの服になりそうだったので、片山に「一緒にやらない」と誘ってみたんです。

——二人とも長年の友人とのことですので、話はスムーズに運んだのでしょうね。

片山:いえ。私はものをつくることにだいぶ疲れを感じていて……。ずっとファッション業界にかかわってきましたが、コロナ禍を経て、昨今ものがあふれている状況や、自分自身も含めてお客様のものの消化の価値観がすごく変化したと思うんです。意味なくものを買い付けたりつくることの罪悪感と戦って、それを打ち消す理由を日々の仕事の中に探していました。なので、 高木と働くことに興味があったので、どうやって自分の中で落としどころをつけようかとすごく模索しました。


子育をしながらカシミヤにひかれた高木さんは、自分たちならではのブランドを立ち上げようと思ったそう。「『イーヨ』というのは、現地の遊牧民の数の『1140』、そして、その音がスペイン語で「&I」なんです。で、「カシミアと私」という言葉遊びで名付けました」と片山さん。

——落としどころは見つかったのですか。

片山:はい。今回のカシミヤのファクトリーの生産背景が、背中を押してくれました。このファクトリーは内モンゴルでカシミヤヤギの飼育から紡績まで、一貫して透明性のある生産をしているんです。カシミヤはラグジュアリーなイメージがありますが、マイナス35℃からプラス45℃ぐらいまですごく寒暖差の激しい過酷な環境で放牧されるので、食料となる草が少ないと母ヤギが自分で堕胎してしまったり、過放牧で砂漠化をさせてしまったり、と問題がとてもあります。ですが、このファクトリーは大学や自治体と協業して、カシミヤヤギの健全な放牧ができるように、現地の遊牧民の方々に指導している。それを聞いて、とても意味があることだなと。

——なるほど、サステナブルかつトレーサビリティがしっかりしたカシミヤなんですね。カシミヤは特別な素材という印象がありますが、お二人にとってはいかがでしょうか。

高木:私にとっては高級品です。だから、特にいいものは、すごく大切にしていきたいし、大事にしていきたいと思っています。
片山:カシミヤは一緒に年月を重ねていける存在で、大人になればなるほど似合うアイテムだと思います。着ていくと毛玉ができるんですが、それを綺麗に取り除いてケアしていきながら、ちょっとクタっとくたびれている質感とか、すごく愛おしいなと。


y YOで使用するカシミヤの由来となるヤギは、動物に過度なストレスを与えないアニマルウェルフェアの精神に根ざしつつ、環境にも負荷を与えないように放牧されている。

——y YOでの、お二人の役割分担についてお聞かせください。

片山:2年前から本格的にスタートしたんですが、すごくフワフワやっていて(笑)。
高木:例えば、「こういうのをつくりたいよね」と、相手に写真を見せるじゃないですか。そうしたら、別に企画会議というわけでもないんですけど、「それなら、こうじゃない」みたいな感じで、ワーっていろんなアイデアが出てくる。
片山:彼女のセンスをとても信頼しているので、クリエイティブなことでまったく嫌なことがないです。「かわいい・かわいくない」は、お互いハッキリありますけどね。高木が何かつくりたそうにしていたら、「あっ、どうぞお願いします」と。
高木:私も「どうぞ」みたいな。
片山:で、おもしろいのが、一番こねくり回してやってくれていたのが、逆に自分のお気に入りになってしまう(笑)。

——デザインに関してはいかがでしょうか。

片山:私はものをつくり続けていて、本当に(アイデアを)使い果たしている。高木がすごく無邪気な感じで「こういうのが、かわいい!」と言ってくれるのが、めっちゃ心地が良くて。二人で盛り上がりながら何となくやっています。
高木:私は元々ベーシックなものしか着ないんです。ワードローブは本当にTシャツ、デニム、スラックスとかだけ。ですが、子どもが生まれて、抱っこした時にどうしても肌に当たる、化繊はあまり着たくない。という気持ちになってカシミヤに興味を持ったんですよ。だけど、カシミヤの服ってベーシックなものが多い。このブランドを片山とやるとなった時に、「他にないものをつくっていきたい」と。
片山:先ほども言いましたが、お互いの専門性と特異性を考えた時に、スタイリングの妙とか色遊びの妙とか、そういう切り口でスタイリストとバイヤーの私たちがつくるカシミヤの遊び方みたいなものが、デザイナーさんが手がけるブランドとは違う切り口で表現できる。「モードなカシミヤブランドをつくりたい」ので、彼女が好きなベーシックを基本に奇をてらったものではなくて、どこかを誇張したり、サイジングだったり、デザインデティールを少し絞ってみたりと、いい意味での違和感を出しています。


上質なホワイトカシミヤの純白な原毛を使用することで美しい発色を実現。「ファーストコレクションだったので、すごくプレイフルなカラーリングですが、鮮やかな色彩で染めても嫌らしくなく、大人の女性がまとってもなじみがいいです」と、片山さん。今シーズンはウェア9型と小物5型をリリース。

——お二人のお話を聞いていると、友人ということもあり息もピッタリですし、楽しんでものづくりをしているように感じます。ちなみにお互いからみた高木さん、片山さんはどんな方なんでしょうか。

高木:仕事をするまでは、片山はいつも忙しくしているけど、フワッとしていると思っていたんですよ。ですが、めちゃくちゃこだわりがすごい。品質表示一つとっても、もうすごくて。絶対に投げやりにならない。私は「あ、じゃあそれで」みたいな感じの性格なんですけど。だから、いつも「何でこの人、こんなに寝られないんだろうな」と思っていたんですけど、「それは寝られないわ」と、一緒に仕事をしてわかりました。おかげで、私もそういうスタンスで仕事をしなければ、ということを学べたし、尊敬に変わりました。
片山:高木は体の中に流れている液体がもうシャレているんですよ。だから、私からしてみたら、「えっ、そんな感じでこんなシャレ感で出来上がるの」みたいな。瞬時のジャッジ力がすごく早いし、スタイリングは最高にかわいいし、自分とは元々好きなテイストも違うので、「こういう風に着地させるんだ」と気づきがあります。また、私が小売りが長いので、スタイリストという、数字に縛られないものづくりができるのが根本的に違う。ですので、単純に「これ、かわいいから良くない」とか、パッションを楽しむ心をちょっと取り戻せました。

——y YOは、高木さんと片山さんが手を取り合ったからこそ、生まれたということが、よくわかりました。最後にRHC ロンハーマンのお客様へメッセージをいただけますか。

高木:本当に楽しんで着てもらいたい。色遊びを楽しんでいただきたい。派手な色に見えるかもしれませんが、ニットだからやさしい色合いに変わるんですよ。怖がらずにカラーを挑戦してもらえたらな、とすごく思います。
片山:私の中でRHC ロンハーマンのお客様は、カラーをとても上手に取り入れていらっしゃる気がして。「思いのまま楽しんでください」という感じなんですが、きっとカジュアルながらもすごく品があるスタイルをしてくださる気がしているので、拝見するのを楽しみにしております。

——どうも、ありがとうございました。


撮影中もポージングや表情が不思議とシンクロする二人。同じポジティブなバイブレーションを持っているからこそ、ワクワクするクリエイションができるのだろう。

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