上質で品のあるラグジュアリーさをまといながら、どこか刺激的で自由な雰囲気を宿すHOORSENBUHS(ホーセンブース)のジュエリー。2005年にロサンゼルスで誕生して以来、その個性的な存在感から感度の高いアーティストやミュージシャンなどのクリエイターから、厚い支持を得ています。ロンハーマンでも人気を集め、ブランドのシグネチャーデザインである「TRI-LINK」(トライリンク)——チェーンのように結びつけたデザインは、すっかりおなじみです。創業者は現在、クリエイティブチーフを務めるRobert G Keith(ロバート・G・キース)さん。HOORSENBUHSが生み出されるサンタモニカのアトリエへ、ロバートさんを訪ねてみましょう。
ロサンゼルス、サンタモニカのメインストリートに面したHOORSENBUHS(ホーセンブース)のアトリエ兼オフィスのフラッグシップストアにて。予約制ながらデザイナーのRobert G Keith(ロバート・G・キース)さんにひかれて、多くのクリエイターが集まる
——どうも、こんにちは。今日は時間をとっていただき、ありがとうございます。私たちロンハーマンとは長い付き合いになりますね。
とてもすばらしい関係を持つことができていると思っている。ロンハーマンのチームと一緒に仕事ができることは素敵なこと。特に遠く離れた地に住んでいて、違う生活習慣を持っているみんなと理解し合えているのがね。同じ美的感覚と意図を持って美しいもの、美しいことをデザインしていく。そのために一緒にコミュニティをつくり上げ、良い関係を築いていくのは本当にすばらしい。環境を整備すること、その環境とはライフスタイルに大きな意味を持つ部分であるもの。今ここで目にしているものや本質が広がりを持ち、グローバルで同じ考えを持つ人々が集まり、さまざまな活動ができて、それを共有できることは、本当に素敵だよ。
オフィスの一角にはスタッフの趣味のバイクが集うのも、HOORSENBUHSらしい
——それはうれしいです。以前からロバートさんに聞いてみたかったことが。デザインのインスピレーションはどこから得ているのでしょうか。
前から話しているように、自分がデザインするものすべての基礎は「トライリンク」から来ている。ジュエリーデザインに初めて取りかかったととき、周りには数え切れないありとあらゆるモノがあった。ネックレス、ベルト、リング……。写真家として仕事をするのにそういうモノを使っていたんだ。その時に、これらのジュエリーはどうやってつくられているんだろう、ということに興味を持ち、ジュエリーをつくりたい、という好奇心にかられた。いざつくり始めてみると、自分はたった二つのジュエリーブランドしか知らないことに気づいた(笑)。スイスの時計メーカーとフランスの宝飾品メーカーだ。
ジュエリーショップとは思えないオフィス内のインテリア。この遊び心あふれる空気感が、HOORSENBUHSのデザインにも反映されている
——ロバートさんは、もともとハリウッドで写真家として活動されていたんですよね。
それで、いったいどんな人たちがどんなジュエリーを身に着けているかが気になった。なるほど、こんな人たちが身に着けているんだ、と目にした。そして、どんなデザインであろうと、自分が手がけたものは、「自分がデザインした」ということを認識できるものにしようと決めたんだ。だから、すべて自分がデザインするジュエリーのコレクションは、トライリンクから得た形と感情とから発祥していることを意識することが最も大切だと信じている。それはかなり大変なことだけど、その信条は曲げることはできない。試行錯誤をして上手くいかないことも多いけど、われわれはトライリンクから伸びる茎のようなもの。それを継承していかなければ意味がない。時々15年前につくった作品を見て、「これは改良の余地がある」と思うこともある。そんな時はそこから得たインスピレーションで、新たな作品をつくることもある。中にはすでに相当古いイメージになっているものもあるけど、イスに座って型となるワックスを手にしていると、突然インスピレーションがわいて、新しい作品が出来上がることもあるんだ。
HOORSENBUHSのシグネチャーデザインの「TRI-LINK」(トライリンク)をあしらったウエア。HOORSENBUHSのブランド名は、ロバートさんの祖先が乗船していた16世紀のオランダの帆船の名前が由来。鎖のデザインもそこにいきつく
——HOORSENBUHSが大切にしていることはなんでしょう。また、ジュエリーを通してお客様に何を伝えたて、何をもたらそうとしているのでしょうか。
作品はすべてハンドメイドだから、それは自分の創造力の表現に他ならない。それを共有している。ただそれだけだよ。自分の作品を好きな人もいれば、まったく興味がない人もいるだろう。それに対して自分はなんとも思わない。一方、もし成功と結び付けたいと思うならば、多くの人々に作品を好きになってもらい、そのユニークな視点を周りとシェアしてもらいたいと思うだろう。自分のハンドメイドへのこだわりを認めてくれて、さまざまなことに注意を払い、良いモノを探そうとする意識の高い人たちだろう。そして作品に対価としてお金を払っても良い、と思う人たちのことを自分も好きになり、感謝の気持ちを伝えたい。そういう人たちのためにもつくり続けていきたい。
なんと、オフィスにはミュージックスペースも!作業の手をとめセッションが始まる時も
——ロバートさんにとってジュエリーとは。
装飾品という見方と錬金術という見方の二つがある。装飾品は人々の生活に根差した文化。それは国や習慣によって違う。錬金術は金属に関する深い理解だ。金とは何か、銀とは何か、何が含まれているのか、などを知る必要がある。では、ファッションという観点でみてみよう。そういえば、昨日、ストアに足を運んでくれたお客様が、昔自分に聞いてきた質問を思い出させてくれた。好きな見た目とはなんだ? タイムレスな見た目とはなんだ? とかね。別にビーサンでもコンバースでもヴァンズでもなんでもはいて、シンプルなTシャツにジーンズでいい。でも、そこに装飾品であるジュエリーを身に着けることで、一気に見た目が変わる。それが自分にとってのジュエリーなのさ。
個性派ぞろいのHOORSENBUHSのチーム。長年の友人であるブランドディレクター、ケシャー・パーカーさん(キースさんの隣)をはじめ、多様な価値観と美術的センスが融合してHOORSENBUHSの世界を生み出す
——最後に、日本のお客様へ向けたメッセージをいただけますか。
自分と作品を好きになり、リスペクトしてくれてありがとう。アメリカでは起こらない感動が日本では起こった。文化の違いだと思うけど、アーティストに対する理解の仕方が違うと思う。一般論になるけど、アメリカでは自分がHOORSENBUHSの創業者だと紹介されても、「ハーイ」と言うだけですぐに商品を見に行ってしまう。でも日本では紹介されると、立ち止まって自分に興味を示してくれる。何かのイベントだったら、Tシャツを購入してそこにサインを求められる。一緒に写真を撮ってほしいと言われたりもすることもね。そんなことはアメリカではめったに起こらない。日本のみんなの方が、自分と作品に対する思いがさらにプレシャスだと思う。これからも、どうか自分と作品を愛してほしい。自分もみんなへ愛を返すので。
——ロバートさん、どうもありがとうございました。
Journal
Robert G Keith (HOORSENBUHS)
RHC Journal
Posted on Dec 05.2024
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