サーフィンの世界には、「フリーサーファー」と呼ばれるサーファーがいる。お決まりのテクニックやスタイルにとらわれずに、文字通り自分の意思で「自由」に波に乗る。雑誌やサーフムービー、近年ではネットやSNSなどの様々なメディアを通して、自らのサーフスタイルを世界に発信。自分のライディングで見る者の心を揺さぶり、いかに魅了させるか。波とシンクロして、独創的なインスピレーションあふれるサーフィンで、波の上にボードでトラックを描く。フリーサーファーはときに波の上のアーティストとたとえられるが、それも納得だ。
Ozzie Wright(オジー・ライト)という存在自体がスタイルそのもの。サーファーとしてはもちろんアーティスト、ミュージシャンと多彩な顔を見せる
そんなフリーサーファーの中でも世界屈指の人気を誇るのが、Ozzie Wright(オジー・ライト)だ。想像だにしない奇抜なセンスで波の上に描くラインは、まさにアーティスト。1976年、オーストラリアのシドニーで生まれたオジーはヒッピーの両親のもとに育つ。学校には通わず、独自の価値観を持つ両親によるホームスクールで教育を受けたことで、自由な精神を養った。世界でも有数な波のクオリティを誇るシドニー、ナラビーンでサーフィンを始めたオジーは、すぐにコンペティションの世界で頭角を表す。「エアリアル」と呼ばれる、波から飛び上がり空中でトリックする大技を武器に活躍。だが、ヒザへの負担は重く、21歳で靭帯を断裂して、コンテストから遠のくことに……。
オジーが活路を見出したのが、映像クリエイターとのコラボレーションによるサーフムービーへの出演だった。数々の作品に登場し、若い世代のサーファーたちの間でカリスマ的な人気を呼び、フリーサーファーの先駆けの一人となった。サーフィンだけにとらわれず、クリエイターやミュージシャンとしても活躍するようになり、その人気は加速していった。そんな文字通り「自由」な生き方を謳歌しているオジーが今シーズン、自らのニックネームOzzy Wrong(オジー・ロング)を冠したブランド「WRONG WEAR」(ロング・ウェア)をRHCロンハーマンのフィルターを通し、世界初リリース。ローンチパーティのために来日したオジーに話を聞いた。
オジーがデザインしたグラフィックを落とし込んだ「WRONG WEAR」(ロング・ウェア)を、RHCロンハーマンのフィルターを通して世界にリリース。半袖シャツ、Tシャツ、ロングTシャツ、スウェット、ビーチタオル、サーフボードとバリエーションも豊富だ
——今回のRHCロンハーマンとWRONG WEARのコラボレーションについての感想は。
とてもワクワクしているし、RHCロンハーマンとコラボができることは光栄だ。絵を描くことへの愛、サーフィンへの愛、そしてサーフカルチャーへの愛を分かち合えることは心からうれしいよ。いつサーフィンを始めたかも覚えていないけど、小さいころからサーフィン業界の中でアーティストとして仕事をすることが夢だった。それ以外のことは考えられなかった。だから今、その夢が叶いアーティストとして仕事ができているのは最高の気分さ。
——WRONG WEARのコンセプトは。
基本的には生活の中でいつも起きていることがコンセプト。「これ!」ときちんと決まっているわけではない。だって生活は毎日いろいろと変わるだろ。シリアスに考える必要はなくて、ただ楽しくておもしろくて、というのが大事。デザインを描くときはいつも紙に手描き。たまにパソコンを使うこともあるけどね。今回のコレクションで一番のお気に入りは、今着ているこれ「KISSES」。すごくいっぱいの「KISS」があっていいだろ。キスが好きだからね(笑)
—— ローンチパーティでRyan Burch(ライアン・バーチ)のシェイプしたサーフボードにアートワークをするけど、彼はどんなキャラクターかな。
ライアン・バーチはね、自分がニックネームを付けたのだけど「グレイハウンド」。すごく速く走る犬種のことさ。彼はとにかくエネルギーと意欲が半端なくて、「さぁサーフィンだ!」と言って、ものすごい勢いでパドリングをしてベストなポイントに行って波に乗ったかと思ったら、戻ってきてボードをシェイプして、今度は料理をしてと、とにかく目まぐるしい。もうエネルギーの塊のようなヤツ。しかもそのエネルギーがとてもポジティブなんだよ。まあ、本当にいいヤツさ。一緒にいてすごく楽しいし、大好きだしとても尊敬している。シェイパーとしてもエクセレントだね。彼が自分にシェイプしてくれるようになってから7年、いやもっと長いかな。どれも素晴らしいボードだよ。
お気に入りのデザイン「KISSES」の半袖シャツとタオルを身にまとって。心も体も軽やかだ
——今、オジーはオーストラリアでどんなライフスタイルを送っているのかな。
最近、ちょっと田舎の方、レノックスヘッドへ引っ越したんだ。ビーチに近いからもうサーフィンし放題だし波は最高! もちろんバイロンベイでもサーフィンをするし、インドネシア、バリ島にもサーフトリップをしている。サーフィン、アート、音楽の毎日。本当に自分はラッキーだよ。子どもが二人いるんだ。息子は16歳でサーフィンにハマっている。娘は10歳でサーフィンもするけど、スケートボードにも夢中。彼女は学校に通って自由に音楽も楽しんでいる。とてもいい子たちで、つくづく自分はラッキーだと思うよ。
——アート、音楽のクリエイションのアイデアはどうやって得ているの。
何でも日々の生活の中で起きていることからアイデアが浮かぶのさ。友達と過ごしている、旅に出ている、ギターを弾いている……。そんなときに頭の中に浮かんでくるんだ。特に気分がリラックスしているときにね。浮かんだらすぐに書き留めるようにしている。それがデザインの原点さ。
—— 好きな言葉、大切にしている言葉は。
「LOVE」は美しい言葉だよね。愛がいろいろな出来事を上手く操ってくれている。人生の中で起きる良い出来事というのは、そこに愛を注ぎ込んだときに起こるものだと思う。愛を注げば、必ず良い形で自分に戻ってくると思うよ。
Ryan Burch(ライアン・バーチ)がシェイプしたサーフボードにオジーがアートペイント。世界に一本だけの貴重なボードだ
——オジーは自分自身のことをどんな人間だと思っているの。
基本的に、いい人間だよ(笑)。人が好きだし、周囲の人を理解して共感しようとする。でもね、実は感情の起伏が激しくもある。ハッピーなときは天にも昇る気持ちだけど、ものすごく深刻に物事を考えてしまって本当にひどく落ち込んでしまう時もある。いつももう少し冷静でいられたらどんなにいいだろう、と思っている。最近は、何事も良い方に向かっているよ。
—— 将来の新しい夢やプロジェクトがあれば教えて。
家の敷地に住まいとは別に広い小屋があるんだ。それをアートギャラリーにリフォームしたいね。それから自分が描いた絵をたくさん載せるアートブックを出版したい。そしてもっともっとアート作品をつくっていき、余生はアーティストになりたい。それが僕の夢さ。
——RHCロンハーマン のお客様へメッセージをお願いできるかな。
自分がデザインした服に興味を持ち、手にしてもらえたら本当に心から感謝したい。これからもサーフィン、アートにソウルと愛を注ぎこんでいく。サーフカルチャーをリスペクトして、さらに前向きでおもしろくて楽しいものにしていきたい。サーフィンの地位をもっと高めることが大切だと思っているからね。人は好きなこと、やりたいことに価値を見出すわけで、自分もそうありたい。そして、自分がなりたいものになりたいと思っている。きっと、みんなもそうだろう。
人を楽しませることが大好きなオジーは、メローな人柄で誰からも愛される。今後の行動から目が離せられない
Journal
Ozzie Wright(WRONG WEAR)
RHC Journal
Posted on Sep 25.2024
Latest Issue
-
Courtney Michelle Ogilvie(LES TIEN)
03.Oct.2024“ラグジュアリー”と“ミニマリズム”——この相反するベクトルをデイリーウェアにおいて融合させているのが「LES TIEN…
Read More -
Ozzie Wright(WRONG WEAR)
25.Sep.2024サーフィンの世界には、「フリーサーファー」と呼ばれるサーファーがいる。お決まりのテクニックやスタイルにとらわれずに、文字…
Read More -
Ron Robinson(APOTHIA)
26.Jul.2024ロンハーマンにかかわる方を迎え、さまざまなお話をうかがいます。今回のゲストはカリフォルニア発のフレグランスブランド「AP…
Read More