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Courtney Michelle Ogilvie(LES TIEN)

Courtney Michelle Ogilvie(LES TIEN)

RHC Journal

Posted on Oct 03.2024

“ラグジュアリー”と“ミニマリズム”——この相反するベクトルをデイリーウェアにおいて融合させているのが「LES TIEN」(レス ティエン)だ。シャツ、フーディ、パンツなどベーシックなアイテム、グレー、ホワイト、ブラックなどのニュートラルなカラー。目立ったロゴや華美な主張はないものの、マテリアルとディテールへのこだわりで、クリーンな上質さが浮かび上がる。何といっても、驚くのはその着心地だ。絶妙なフィット感と肌触りの良さは、オンタイムのストレスから身体も心も開放してくれる。まさに究極のデイリーウェアブランドの一つといっていいだろう。2018年にロサンゼルスで誕生したLES TIENだが、瞬く間に名だたるハリウッドの俳優やミュージシャンたちがオフタイムで愛用するようになった。そして、顧客の90パーセントがリピーターと、一過性ではない根強い人気がうかがえる。


「LES TIEN」(レス ティエン)はフランス語で「あなたのもの」を意味する。文字通りどのような体型でも完璧にドレープが出るようにデザインされて、着る者を選ばない

LES TIENの仕掛け人であるファウンダーでクリエイティブ・ディレクターが、Courtney Michelle Ogilvie(コートニー・ミシェル・オルギー)だ。これまでに有名アパレルブランドの立ち上げにかかわり、ファッション界で成功を重ねてきたが、満を持して自らのブランドを立ち上げた。新進気鋭ながら、アパレルへの哲学、デザインに対する美学は、業界からも大きな注目を集めている。今シーズン、RHC ロンハーマンはLES TIENとのコラボレーションを実現。ローンチに先駆けて、コートニーのスタジオを訪ねて話を聞いた。


LES TIENのウェアは、すべてロサンゼルスのダウンタウンのファクトリーで「垂直統合型」で一貫生産されている。生地も、裁断、縫製、ガーメントダイの前に自社で手がけるというこだわりようだ

——コートニー、忙しいところ、時間をとってくれてありがとう。早速だけど、まずは今回の RHCロンハーマンとのコラボレーションについて感想を聞かせてもらえますか。

RHC ロンハーマンとのコラボレーションにはとても感謝している。あなたたちを販売者として、そしてカルチャーとしてとても尊敬している。お客様のカルチャーに合わせてアイテムをモディファイできることがとても素敵だし、この関係を続けていくことが楽しみ。RHC ロンハーマンはキュレーションされたアパレルビジョンとカルチャーにおいて確固たる地位を持っている。日本で成功していることに大きな拍手を贈りたい。

——とても、うれしいです。今回コラボしたシャツもそうですが、LES TIENは一貫してロサンゼルスのファクトリーでの生産にこだわっていますね。その理由は。

私たちのウェアがロサンゼルスでつくられている理由は、私がロサンゼルスにいるから(笑)。この20年間、私はこのダウンタウンで、縫製とフルパッケージのファクトリーを運営してきた。私はハンズオン(実地体験)を大切にしている。すべての工程をコントロールできることが重要だと思っているから。すべてが自分たちの手の中にあるから、各ステップを管理し修正しながら進めることができる。ここで服づくりをすることは、私たちのコミュニティをサポートして、品質にこだわるため。


独自のセンスと信条でLES TIENを成功に導いたCourtney Michelle Ogilvie(コートニー・ミシェル・オルギー)。従来のアパレルブランドとは異なるアプローチで服づくりに挑む

—— 素晴らしいですね。コートニーのデザイン哲学を教えてください。

私のデザイン哲学は、物事を過度に複雑にしないこと。つまり、製品の意図に忠実であるという意味でのミニマリズム。服を装飾やロゴで飾り立てる必要はない。適切な服とは、着る人のシルエットと体型が基盤にあると思っている。イームズのチェアをたとえに使うのが好きなんだけど、あのクオリティは計算しつくされたもの。つくっているものが何であれ、あらゆる側面が見えるようにすべきだし、それを隠す必要はない。大切なのは製品が主役であるということ。LES TIENは、必要最低限のシンプルさを追求して、その目的や機能を果たしながら、個人の自己表現を実現することを目指している。

—— デザインのアイデアはどこからくるの。


生産からモデル撮影ができるスタジオまでそなえたファクトリー。コートニーの目が届くように、すべての施設が集約されている

私のデザインは、物語の背景のようなもの。デザインやインスピレーションは、物語の中の小道具のような存在。毎回のコレクションは、私の人生経験や、時にはただ感じたことから生まれる。自分が感じたことや世の中の雰囲気から、まずカラーパレットをつくる。シルエットは、その物語の「ユニフォーム」のようなもの。だから、私はデザインから始めるのではなく、まず「人生」を出発点にして、そこから逆算していく。

—— コートニーにとってファッションとは。

それはとても難しい質問だね(笑)。私にとってファッションは、自分が表現したいことを伝えるための手段。たとえば、ファッションはクルマのショールームのようなもの。どう見せるか、どう感じるか、そしてどう人々とつながるかが大切。さまざまな側面があるけど、最終的な目的は「自己表現」。誰でも高級ブランド店に行ってマネキンが着ている服を買える。だけど、シンプルで必要なベーシックなアイテムをどういかして、その日の自分の気分を表現するかが、本当のポイントだと思う。

—— 最後にRHCロンハーマンのお客様にメッセージをもらえますか。

着るのが怖いと思ったり、好きだけど結局脱いでしまったりする服があるなら、まずは直感に従って。最初に思ったこと、自分らしさを大切にしてほしい。他の人がすすめたからや、周りの期待に合わせて何かをする必要はない。服はあなたのストーリーを伝えるための道具。もし悲しいなら、全身黒を着ればいい。もし元気で赤と緑を一緒に着たくなったら、ぜひそのストーリーを伝えて。私の父がいつも言っていたのは、「自分がカッコいいと思えたら、気分も良くなる」ってこと。だから、その日身に着けるものが、あなたのエネルギーや波動のマントラ(信念)を表すものになればいいと思う。

—— 素敵な言葉ですね。コートニー、今日はどうもありがとう。


トレンドを追うことなく、服本来のあり方を追求するLES TIEN。今回のRHC ロンハーマンとのコララボレーションは、ウォッシュ加工が施されているスウェット生地を使用したボタンシャツ。ミニマリズムを追求しながらも上質さをかもし出すデザインは、タイムレスかつシーンレスだ

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